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漫画考察 漫画の描き方を考える

【既存作品に見るストーリー構成 ガンバの冒険】
往年の名作の一つといわれるガンバの冒険の劇場版を見てストーリー構成など、漫画へ共通する部分があるのか個人的感想を述べています。いわゆるネタバレありなのでそのような表現を嫌う方は閲覧はお薦めしません。

視聴したガンバのストーリーの概要のみを記述したテキストはこちらです。いわゆるネタバレを含みますのでご注意ください。なるべく、ここだけ読んでも構成上の展開は理解できるような書き方には努めますが全然解りにくかったらごめんなさい。

冒頭構成

まず、冒頭シーンですが缶の中に入ったガンバとボーボが猫に襲われているという描写は「ストーリー制作 第一印象」で述べている【何かしらの「最中」を描く】という事項にあてはめられます。

続いてガンバたちの最初の目的である「海を見に行く」という要素で、行きたくない発言で弱気なボーボ。何が何でもいくで強気なガンバの性格描写を示します。そしてオープニングテーマが流れるわけですが、漫画にあてはめると扉絵になります。扉絵を描いてから冒頭シーンを描いていくのか、冒頭のほんとにさわりを描いてから扉絵を描くのか、またその扉絵もただのイメージ的なものかその冒頭の流れに沿った魅せるカット的な絵の扉絵とするかなど、作者側の意向でアレンジすることが可能です。

最初の目的である海へはアッサリ到着する形ですが時間が夜だったため、ガンバの期待していたものとは違うため、達成感は得られません。あくまでもここでは仲間の登場やノロイをやっつけに行くと言う真の目的のための舞台を整える描写がメインのようです。その割には一通り仲間も揃って出発までの描写が淡白。ガンバ強気の一辺倒なのは主人公だからいいんですが、敵であるノロイの存在を知ると仲間にならない無名なネズミたちはさっさと恐れおののいて消えるわけですが、仲間になったものたちは恐怖を感じておいてそれを払拭するような描写もなくあっさり集結した感じです。

出発後は比較的雑談といった雰囲気ですが、ガンバの霧がかった海を見て「海は牛乳」発言で改めて当初の目的であった海に軽く触れた後、船酔いで弱った状態で船内から甲板に上がったときに青空の下、広大な海を目の当たりにすると言う、三段活用で第一の見せ場を提供します。

時間的にも90分映画の3分の1程度を経過してタイミング的にもベストですし、この開放感の前にガンバと同じ町ネズミであるボーボに予め船酔いよさせてガンバが船酔いすることにも説得力を持たせたり、忠太に改めて助けに行く島の状況や敵であるノロイの説明をさせることで視聴者への情報理解と怖さを伝えたことで場の空気を重くしての大海原の登場ですから、開放感を強める演出もしていたことになります。

中盤構成

中盤はガンバたちが乗っていた船が台風で沈んだり、脱出後、手作りのイカダが巨大タンカーにひかれガンバと仲間がはぐれるといった第一の試練的な描写がなされているわけですが、その出来事そのものは淡々と流れます。勿論ワーキャーは言ってますが、ここで重視されたのはガンバと仲間がはぐれた状態であり仲間の結束感を描きたかったと見るべきでしょうか、いないガンバに思わずボーボが食事を投げ、それが海へポチャンなどはしんみりさせる演出でした。再会後はBGMを流し会話のないのんびりした所やアクションシーンを織り交ぜた行動描写に終始し、繋ぎの印象が強いです。

終盤構成

鳥たちの助けによってノロイ島へついたガンバたちはこれ以降ノロイとの戦いに終始するわけですが、力の差は歴然なので逃げつつ戦うが基本です。そして渦潮という自然現象を利用して部下イタチたちを激減、大将:ノロイも衰弱し最後自分らで止めを刺す状態までもっていくというものです。

終盤構成を小分けにすると以下の通りです。
・島上陸→ノロイ登場
・島のネズミたちと合流→新たな食料源を探すという島内での目的を設定
・出発→立ちはだかるノロイ(ピンチ1)→岩礁に逃げ込む
・岩礁に襲撃をかけるノロイ(ピンチ2)→作戦たて応酬も島ネズミの長老が犠牲に
・先祖から伝わる歌で長老を看取る→その歌詞から打開策を発見
・決戦をかけた移動→作戦の成果で手下のイタチ全滅もノロイしぶとい
・主人公ガンバ、阻止のためノロイめがけて特攻
・終結感漂わせる静寂もガンバ喪失で悲しみも拭えず
・しかしノロイは死んでいなかった。ガンバもノロイに張り付いたまま
・主要仲間いっせいに噛み付き、ノロイ絶命。真の終結へ。

このようにノロイたちと戦うといっても、一度で即決戦ではなく、舞台調整や、感情の起伏の演出のため戦いは何回かに割り振られます。最終決戦の前に長老の死があることで悲壮感、絶望感を強めマイナスの感情移入をあげようとしている演出手法も伺えます。手っ取り早く内容を伝えるには箇条書きでないと伝えきれないのが終盤でたたみかける構成をしているというのが伺えます。・・・単に私の文章力がないだけって話もありますw

全体の流れから見る作品の方向性

では作品全体の流れが何を意図しているのか推測してみます。まず仲間側の描かれ方について。性格は主人公ガンバが徹底して「強気・頑張り屋・正義感が強い」といった王道的表現がされていますが活躍したかというと、そうでもない。率先した行動自体をしているだけです。

ノロイはガンバ単独ではなく主要の仲間は勿論、他の動物たちの手助けがあって成し遂げられています。戦いにおいても常に苦戦状態なのでこの作品においての主要テーマは苦難に立ち向かうではなく仲間で助け合うことなのではないかと。ネズミ対イタチと言う圧倒的な差といいエンディングテーマの夢も希望もない歌詞から察するに完全無欠なヒーロー大活躍を狙ったことでないことは確かでしょう

次に敵のノロイ側はとにかく強い描かれ方。登場シーンや倒れるシーンも演出効果が強く正直ガンバたちの一挙手一投足よりも丁寧に描かれています。私自身、子供の時からノロイカッコいいと思ってましたし今回でも登場シーンに「お~」と思ったりしたのは演出が多分に影響してるでしょう。これは敵側も退治に描かれているからこそなしえたことになるのでしょう。結果良い歳した管理人がおっさんになっても偉大な敵キャラとして認知されるようなブランドが確立されたといえます。

残念ながらこの敵描写は正直ページ制約の強い漫画の読みきりでは不利な部分ではあると思われます。それでもこのガンバの冒険と言う作品ないでは主人公サイドが「かっこいい・活躍」という要素ではなく「繋がり・助け合い」の描写に重きを置かれたのであればかっこいい要素もエンターテイメント性では別に欲しいところで、敵側に採用されたということになるのでしょう。

そしてサイド的ポジションの島のネズミや他の動物たちは基本的には物語進行の調整役といえますし、テーマが助け合いであるのならばその他大勢はやはり必須な存在であることも確かです。

もし、同系統の作品を描くなら

このような、「助け合い・繋がり」をテーマにした読み切り漫画を描くとしたらガンバの冒険から参考になる点はどのような所でしょうか。基本属性を箇条書きにしてみました。試す価値ありと思ってくれた方は自分の思考を追加の上、色々なストーリー構成を練ってみてください。

・最も描く点は助け合いのシーンであり困難を打開する場面ではない。
・敵や困難といった乗り越えるべき対象に時間(ページ)は割かない。
・ゆえにその対象(敵)は予備知識無しで存在感が読者に理解できる状態が望ましい。
・作品の三分の一ぐらい来たら第一の見せ場を。
・助け合いがメインなら結果の出るアクション的なシーンはスピーディな構成に。
・そのスピーディさを演出できるやり取りも見せ場の一つとして用意。


関連テキスト:ストーリー制作 第一印象」

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