ダーク系の効果表現
漫画の演出でマイナス的な感情・場面をより効果的に表すため周囲を暗く演出することはよく見られる光景です。そこで暗いシーンでより演出効果が上げられる表現とは何かということを考えてみたいと思います。
背景をダーク系にすることので基本効果とは
まずは通常状態と背景を黒くし肌以外の髪やシャツも黒い背景に同化させたタイプのGIF画像です。この段階で受ける印象としては黒くしたことで停止している印象を強めることはできているような気がします。コマ割をして話を展開させていくことが動画再生とするならば、暗くしたことで一時停止させたといった感じでしょうか。
この停止させる雰囲気は、起きた物事のリアクションに対するダウン的な感情を示すのに用いられたり、行動の中で思考をはさむ描写など、展開中の現場とは別の次元として表現したりするものに使われるのが基本的要素といって良いでしょう。実際にダウン的感情の表現はショックのあまりリアクションが取れず自分が固まってしまうという停止状態、行為の最中での考え中は「今やっていることは置いておいて…」という一時停止要素をもちます。
白の停止、黒の停止の違い
ただ停止状態の表現ということだと、背景のない真っ白な空間での表現というのもよく見受けられるものです。黒と白の表現で違いはあるのでしょうか。
個人的には白い停止は「時間軸は動いたままの停止」の傾向が強いのではないかと思っています。コメディなどでお寒いギャグのリアクションとして固まるキャラがいて次に一拍おいた行動がありますが、これが背景白の場合は反応を起こさない「間」が過ぎるというイメージを個人的に持ちますが背景が暗いと「固まる」停止要素の印象の方がしっくりきます。
アップ状態だと白いのでも固まるイメージを与えることが出来そうですが効果としては黒で覆うよりも劣る印象です。というかアップの場合は表情の違いで使い分ける方が妥当だろうなと思います。黒はマイナス系、白は笑顔などのプラス系という感じで(燃え尽きるイメージなど一部例外あり)。そして白系のエフェクトは光が差し込むといったやはり時間経過を連想させる効果が代表的ですよね。
以上のことから、黒い効果は状況の停止を表し、白い効果は周囲の時間軸は維持しつつもキャラクターは止まる効果を表すことが基本属性と現状ではみなしてみることにします。
効果(エフェクト)の追加による変化
前述した白い停止のプラス効果として光が差し込む表現にはトーンで淡い陰影を用いたり、緩い斜線などのエフェクトがよくみられます。また、人が亡くなる瞬間も白で表現した場合「フッ」とか「ガクッ」の瞬間をこれもゆるい効果線で表現することもあります。冷静にみてるとそれ何って感じではありますが既に読者を引き込んだ状況であるなら意味あるエフェクトであることは確かです。
ここでの効果の意図は前者は柔らかさを増すこと、後者は儚さあたりを強調するものと思われます。では黒い中での意味ある効果とはどんなものでしょうか。
とりあえず今回題材の絵だと「恐怖」「驚き」のようなネガティヴ系でも反応(反射神経)するというスピード性を感じる表情です。停止の黒と言ってきたので相反する要素になります。
そこでまずは単純に縦の効果線を追加したものを試したところ普通に見ている対象物に対して湧き上がる感情のプラスというものは追加されていると思います。当然暗い雰囲気は維持されます。
対してノイズ的な効果にしたものは衝撃を受けた強さは加味されつつも停止力も黒がより食い込んだ分増加されているようにも思います。このように効果線はスピード属性の追加、ノイズは混乱・戸惑いという停滞性の追加というテクスチャの特徴そのままに効果が追加できる可能性は高いようです。実際にストーリー構成をしていく中でこの様なシーンでキャラクターは絶叫するのか、立ちすくんでしまうのかによってベストなテクスチャの選択が一層の効果を挙げるので見せ場となるところは効果という部分でもしっかりと考えて行きたいものです。
その他やってみた効果一覧
左はキャラクターには効果をかぶせなかったバージョンです。前に浮き出た感もありますが効果をより強めたいのならキャラクターにもかぶせた方が良い気がします。結局は好みの問題かもしれませんが。
真ん中は髪や目をグレーにしました。停止力は黒をより食い込ませるという印象を持ったんですが案外これも止まっている印象は強いですし、これも前に浮き出た感じもします。ただ恐怖感はノイズに劣りますよね。もうちょっと違うシーンであれば有効な使い方が出来そうです。
最後の右側は階調反転です。よく解りませんねw。そういえばプロでもこの効果を使い人がいますが単行本じゃない雑誌状態だと紙が汚いですからよく見えないってことがありますよね。ペンタッチが細い人だとなおさらです。大きいコマ割ならいけるかもしれないですが個人的にはやらないことをお勧めしたいですねぇ。